大工道具・刃物の資料

菱貫の玄能・金槌

越後の名工長谷川重郷作「菱貫印」

菱貫さんの初代は長谷川貫一郎で、通称「長谷貫(ハセカン)」さん、あるいは◇の中に貫と打っておられたのでしたので「菱貫」さんと言われていました。

初代に息子さんが居なかったため婿に入って跡を継がれたのが重郷(しげさと)さんでした。
重郷さんの実家は阿部さんでしたが、お父さんが昭忠を名乗る日本刀に彫りをする彫金職人さんで刀剣界で有名な方でしたので、重郷さんは職人として名工の血筋を引いた方でもありました。

重郷さんの作品はどれを見ても金槌の基本である穴が真っすぐに開いており、全て綺麗に造られていますが、ご本人は製品の如く、性格は真面目で兎に角、何時も熱心にコツコツと仕事をしておられ、自分の製品を自慢したり、売り込むようなことは一切しない方で、ただ、黙々と良い製品を作るのに勤められ、値段も値ごろの価格で出しておられました。
優れた技術力を持っているが、決して威張ることはなく、温厚で、いつもニコニコしておられて、例えば同業の方が訪ねて来て技術的な相談をすれば、何時も丁寧に知っていることを全て教えて下さったそうです。
残念でしたが2006年10月19日に急逝されました。

なお、名工として名高い故長谷川幸三郎さんは長谷川貫一郎の弟さんで、兄と一緒に仕事をして玄能の基本を覚えてから独立されて、その後名をなされたものです。

次の写真をクリックすると各作品がご覧頂けます。
鎚目仕上げ5種
鎚目仕上げ磨き4サイズ
重郷之作付鋼4サイズ
説明1、鎚目仕上げの製品は、焼き入れ前にタガネを当てて一つづつ手打ちで鎚目を打ったもので、とても手の掛かった作品です。
説明2、重郷印の作品は付け鋼です。ご本人の本名で「長谷川重郷之作」とご自分でタガネで切っておられす。思い入れのある入念作だと思います。

杢目鍛付鋼四角
重忠杢目鍛付鋼船手
菱貫杢目鍛付鋼2種
説明3、菱貫杢目鍛えの四角玄能は、積層した生鉄の本体の両端に鋼を鍛接したものです。この時は未だ菱貫銘でした。
説明4、重忠銘の船手も、積層した生鉄の本体の両端に鋼を鍛接したものです。実のお父さんが昭忠銘だったので、貴方も忠を使って重忠銘にされたらどうですかと、私がお勧めしてからお使いになった銘です。
説明5、最後の掲載品は積層した生鉄の本体の両端に鋼を鍛接したものですが、こんな仕上げを変えた別仕上げの2本です。左は菱貫ですが、右は重忠銘です。

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